備忘録

日々の出来事やその日に仕入れた情報をお届けします


Sunday, February1, 2004

いよいよ、スーパーボウルが日本時間明日午前8時に迫った。前評判通りの実力を発揮して最終決戦まで登りつめたペイトリオッツと、下馬評を覆し通して金星を重ねつつ勢いよく勝ち進んできたパンサーズ。衛星放送でしか生で試合を見られない日本にあって、衛星放送の見られない我が家では、日本テレビの録画放送まで楽しみはおあずけなのだが、今からわくわくして明日一日はたいへんだ。

ところで、試合が接戦となった場合にキーになるのがフィールドゴール。その重責を担うのがキッカーということになるが、ペイトリオッツには、今やプロボウルにも選ばれるほどのNFLを代表するキッカーとなったヴィナティエリという選手がいる。彼は、小学生の頃は一種の知能障害を持つ子供で、学校では特殊学級で学んでいたそうだ。

本を読むにも字を書くにも、普通の子供の3倍の時間がかかる彼に対して、当時の担任の先生は、「おまえは、人の3倍努力してようやく人並みになれるんだ。もし、人の上に立とうと思ったら、他人の6倍努力しないといけない」とアドバイスしたそうだ。

このアドバイスを素直に聞き入れたヴィナティエリ少年は、他の子供が簡単にこなすことも、コツコツと時間をかけてひとつひとつこなしていき、焦らずに前進することを心がけ、その並々ならぬ向上心で数々の障害を克服し、子供時代からは到底想像出来なかった大学(サウスダコタ州立大)入学を果たした。そして、そこで彼は、アメリカンフットボールに出会い、Amsterdam Admiralsを経て、スーパーアスリートだけが存在するアメリカンフットボールの最高峰、NFLのペイトリオッツへと登りつめた。

きっとヴィナティエリは、他人の6倍の努力を子供時代から今も続けているのに違いないけれど、そのひとまずの集大成を明日の試合で見せてくれることが、またひときわ楽しみでもある。

そしてもう一つ、注目していること。それは、2年前のスーパーボウルで、挑戦者としての姿勢とチームの一体感を示すために、試合前のセレモニーで「We are Patriots!!」というアナウンスと共に全員で登場したやり方を、今回も踏襲するかどうかということ。このセレモニーでの選手紹介は、いわば先発選手にとって究極の名誉となるはずだが、それを放棄して、全員が主役というメッセージを再び発することが出来るか。つまりは、「挑戦者」という姿勢を今回も貫けるか、ということにまずは注目したい。

さて、どうなることやら。


Sunday, February 8, 2004

スーパーボウルは、ニューイングランド・ペイトリオッツが一昨年に続く二度目の王者にめでたく輝いた。今回も、見る者の手に汗握る状況を十分に味合わせつつ、K(キッカー)ヴィナティエリ(2月1日参照)が勝利を決定する残り時間4秒でのフィールドゴールで決着。2年前のボストンでの興奮を呼び覚ますような嬉しい出来事を、1日遅れのダイジェスト版で試合を観戦して、こちらもほくほくした気分になった。この幸先の良さを、今年の残り11ヶ月になんとか反映させたいものだ。

ところで、この試合のMVPに選ばれたQBのトム・ブレイディは、4年前に第6ラウンドの199位でドラフト指名されたという選手。出身のミシガン大学でも、完全な控えだったという選手が、史上最年少でスーパーボウルのMVPを2度獲得した選手となった背景には、やはりヘッドコーチのビル・ベリチックの指導力があるのだろう。サラリーキャップ(1つのチームの選手の総年棒が制限される制度)のために、来年はがらっと顔ぶれを変えることになるけれど(活躍した選手の年棒が上がれば、当然雇えなくなる選手が続出する)、そこでまた今年のようなチームが作り出されるかどうか、ヘッドコーチの腕の見せ所となる。これもまた、今から楽しみだ。


Sunday, February 15, 2004

NHKのとある番組を見ていたら、ミレーやコローに代表されるバルビゾン派の絵画を紹介をしていた。実は、この印象派に道を開いたと言われるバルビゾン派の絵画には思い入れがあって、僕が茅ケ崎に住んでいた1996年11月に、すぐお隣の平塚市美術館で開催された「ミレーとバルビゾン派の画家たち」という企画展を見て以来のファンである。おまけにボストン美術館には、このバルビゾン派と呼ばれる、1830年頃からパリの南東フォンテーヌブローの森にある小村バルビゾンに集った画家たちの絵が、それはまさに所狭しと(廊下の壁にまで)展示してあったものだから、ますます好きになってしまったという代物。

バルビゾン派の画家たちは、当時は美化するに値しない(つまり絵を描く対象になり得ない)と思われていた主題、すなわちどこにでもある田舎の風景や、貧しい農民の生活を描くことで、格段に絵画美術の領域を広げた功績者たちである。しかし、歴史的な事件や英雄を描いてこそ芸術であると考えられていた当時にあっては、彼らに対する批判は凄まじかったに違いない。それにも屈することなく彼らが活動したからこそ、さらにその精神を受け継ぐ印象派の成功をみることになったのだろう。そんなことを考えながらさらにコローの絵を見ると、青く澄んだ空に伸びる何の変哲もない木々が、深く目に残ってくるのが心地よいのだ。

考えてみれば、世間の大勢に左右されずに、自分の価値観をひたすら信じてそれを行動に移すことほど難しいことはない。それは、芸術の世界に限らず、我々のような科学の世界でも、一般の社会生活の上でも言えることだろうと思う。しかし、200年ほど時間を経過した後に、フランスから遠く離れた異国の地でその絵に思い寄せている者が居ることを思えば、信念を貫くことの偉大さを身にしみて感じることが出来る。

果たして自分は周りに流されない信念を貫けるか、そもそもそれだけの信念を持てるのか、バルビゾン派の絵を見ながら勇気をもらいつつ、頑張るかな。



ボストン編へ最新版へ


 画像への無断リンクを除いてリンクフリーです。
 ご意見・ご感想はe-mailでお願いします。
Copyright (C) 1996-2004/ yabe, t. (web@yabets.net)