パン酵母って?
  学名は Saccharomyces cerevisiae といい、一般にはイースト菌と呼ばれることもある。パンを作る際に利用されるだけでなく、酒造用の発酵菌として広く利用されている。また、単細胞の真核生物であることから、哺乳類などの高等真核生物のモデル系としてさまざまな研究の対象となっている。

細胞壁って?
  パン酵母やカビなどの真菌は個々の細胞が細胞壁によって囲まれています。細胞壁は細胞の最外層に位置するため、細胞外界からの刺激や情報を最初に受け取り、これらを細胞内に選択的に伝達するとともに、その刺激や情報に対して種々の細胞応答をする重要な役割を担っています。また、細胞壁の機能は、細胞の形態を規定し、細胞に剛性を与えることだけでなく、細胞内の多くの生理的機能に関与していることが明らかにされつつあります。パン酵母の細胞壁は、グルカン、マンナン、キチンという多糖によって構成されています。

細胞壁を研究すると?
  もっとも注目されている応用は、抗真菌剤の開発です。現在、AIDS患者や抗癌剤の服用者に見られる深刻な真菌症に対して、有効で安全な抗真菌剤の開発が急務となっています。こうした薬剤の開発の端緒として、真菌の細胞壁を構成する多糖をターゲットとすることは、同じ真核生物に属する動物細胞には細胞壁が存在しないため、副作用を引き起こさないより安全な抗真菌剤の開発に最適であると考えられています。しかし、その基本となる細胞壁を構成するそれぞれの多糖の生合成機構は、いまだ明らかにされていません。そこで、世界中の研究者が、グルカンやキチンといった細胞壁の構成多糖の生合成機構の解明に日夜努力しています。
  私の研究テーマは、細胞壁の構成成分のひとつであるキチンの生合成機構を、キチン合成酵素による合成反応機構を明らかにすることで解き明かそうとするものです。

YABeT's 研究成果

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最終更新日:1999年 5月 9日