備忘録・2000年12月

日々の出来事やその日に仕入れた情報をお届けします

Sunday, December 31, 2000
 ボストンと14時間の時差のある日本で、去年よりちょっと早く新年を迎えようとしています。

 1年7カ月ぶりの日本でしたが、帰ってきてみるとちっとも久しぶりだという気がしないのは、不思議な発見でした。

 例年に負けないとびっきりいろいろなことが目まぐるしく起こった2000年にも、もう少しで終止符。振り返ってみれば、今年もまた、本当に恵まれた良い年でした。

 このホームページも、沢山の方々に支えられて、20,000アクセスを超えるという節目も迎えることが出来ました。本当にみなさんに感謝しています。

 どうぞ、来年も、そして来たる21世紀も、よろしくお願いいたします。

 よいお年をお迎えください。
2000年12月31日 23時45分00秒


Wednesday, December 27, 2000
 ちょっと古い話題になってしまうけれど、国立大学協会は11月15日に開いた総会の中で、大学入試センター試験に5教科7科目を課す原則を決めたそうだ。これは、2002年に実施される新学習指導要領で、教科の内容が3割削減されることになっているが、その前日に発表された今年度の「教育白書」で、文部省が「新要領の実施で学力低下は起きない」と主張していることに対して、大学関係者が反旗を翻した形となる。

 歴史は繰り返すというけれど、まさに共通一次試験の時代に逆戻り。「猫の目改革」と批判されながらも、よりよい試験制度を求めて変化してきたはずの全国一斉大学入試制度だが、あれまあ、振り出しに戻ってしまったようだ。

 これも、最近問題視されている大学生の学力低下に歯止めをかけようとするものだけれど、いつの時代にも、教育水準の低下は悩みの種であるもの。

 約4000年前のシュメール人が残した史上最古のエッセーには、「近ごろの若者はものを知らない」という嘆きが記されている。

 さて、20世紀も残り4日となって、ちと早いけれど僕は今日が仕事納め。明日から10日間の休暇をもらって、新しい世紀の始まりに備えるべく、鋭気を養おうという魂胆。

【TODAY】
AD1571 ケプラーの法則を発見するドイツの天文学者ケプラー(Kepler,Johannes)誕生
AD1654 スイスの数学者ベルヌーイ(Bernoulli,Jacques)誕生
AD1822 フランスの細菌学者パストゥール(Pasteur,Louis)誕生


Tuesday, December 26, 2000
 ボストンの今日は、今シーズンの最低気温を更新するマイナス15℃。おまけに風が強いもんだから、体感温度はマイナス35℃にもなってしまうんだとか。

 どうりで、大学へ向かう途中、強風吹き荒れる橋を渡っている15分の間、誰にもすれ違わないはずで。ああ、つらの皮の厚い人がうらやましい・・・(?)。

 さて、12月27日発行のメールマガジン『なるほど!わかった!科学の不思議』の今回の話題は、「パンダ」。

 この動物の主食は御存知「竹」だけれど、なんと、もともとパンダは肉食動物だった形跡があるらしく、実は竹に含まれる栄養(竹にはタンパク質や脂肪などバランス良い栄養が含まれている)を、効率よく吸収するのには無理があるのだとか。それだから、野性のパンダの1日の竹を食べている時間は15時間もあるのだそうで、まさに起きていれば竹を食べているといった感じ。

 パンダは中国全土に分布していた動物のようだけれど、人間の生活域の拡大に伴ってパンダの生息域はどんどんと狭められ、現在は四川省と甘粛省などの一部に、約1000頭が生息しているだけ。先の肉食動物だった形跡と考え合わせて、この地域で竹だけを食べて生活していた変わり者のパンダだけが、現在に生き残ったのだと考えられている。

 現在の生活の様子は、標高2500m〜3600mの竹林で、群れは作らず、アライグマ科に分類されるけれども冬眠もしない。寿命は10数歳だそうだ。

 中国語で「大熊猫」と言われるのはよく知られているところだけれど、「パンダ」とはネパール語で「竹を食べる者」という意味。では、和名は何かといえば・・・「シロクログマ」。あまりに安易なものが、人々から忘れ去られていくのは世の常でして。

【TODAY】
AD1898 キュリー夫妻が放射性元素ラジウムを発見する
AD1934 アメリカのプロ野球との対戦のため、日本初のプロ野球チーム「大日本東京野球倶楽部」が創立される


Monday, December 25, 2000
 クリスマス・デーの今日は、街中の店という店が休み。こういう事態は去年すでに経験しているので、今日の食糧を獲得するために、きのうの夕方、近くのスターマーケットというスーパーに出かけた。しかし、クリスマス・イブの昨日は、このスーパーも午後4時半にはすでに閉店していて・・・。はからずも、今年もまたまたひもじいクリスマスなのである。

 さてさて、昨日で今年のアメリカン・フットボールのレギュラーシーズンが終了し、新監督を迎えた我らがペイトリオッツの今シーズンは、何とも惨憺たる結果に終わってしまった。

 確かに11敗したうちの実に7試合が、1タッチダウン差(7点差)以内というほんの紙一重の僅差で負けたケースが多かったことは事実だけれど、つまりは「勝負弱い」ということで、何の慰めにもなりはしない。来年に期待。

 また昨日は、チーフスの名QBとして知られるウォーレン・ムーンの、17年という長いNFLでのシーズンの最後の日でもあった。現在彼は44歳。黒人QBのパイオニアとして知られる彼だけれど、そのQBとしての記録が前人未到の偉大な記録であることに、あまり焦点を当てられることはない。

 1978年にワシントン大学をローズボールで勝利に導いた彼を、NFLのQBとしてドラフト指名する球団は当時なく、「地肩に問題あり」とのレッテルを張られていたのだけれども、その後彼は、カナディアン・フットボール・リーグ(CFL)で5年連続して王座決定戦に出場して、そんな評価を自ら否定してみせた。

 しかし、NFLが彼を指名しなかった背景には、「黒人QBは成功しない」という迷信が根強く人々に信じられていたからだろう。これは、日本のプロ野球で「メガネをかけたキャッチャーは大成しない」との迷信から、立命館大の古田選手を頑なに在阪球団が敬遠し、ドラフト指名確実といわれた古田選手にどこからも声がかからず、その後トヨタ自動車で活躍することで自らその実力を示して、ようやくヤクルトが触手を伸ばしたという話にも通じるかもしれない。

 1984年になってようやくオイラーズに入団したムーンは、その後17年というフットボーラーとしては異例の長命ぶりを発揮して、NFL歴代3位のパス獲得ヤード数、歴代4位の通算TDパス数を残したけれども、これにCFLでの成績を加えると、70,553ヤードという通算パス獲得ヤードも、435という通算TDパス数も、NFLの英雄ダン・マリーノの記録(61,361ヤード、420TDパス)をゆうに超すことになる。

 プロフットボール史上最高のプレーヤーとしての、当然の名声を得ることなくNFLを去るムーンだが、昨日のファルコンズとの自らはついにフィールドに立つことのなかった試合途中に、引退を告げるアナウンスがあったとき、敵地の観客が総立ちで去り行く名プレーヤーを惜しんでくれるのを見て、彼はきっとそれで満足したのに違いない。

 自分の道は、どんな障害があろうとも自分で切り拓けるものだということを、彼は証明することが出来たのだから。

【TODAY】
AD 354 キリストの降誕日をこの日と決め、最初のクリスマスとなる
AD 828 空海が、庶民への教育を目的として、綜芸智院を創立する (現在の綜芸智院大学・・・日本初の大学)
AD1783 与謝蕪村、没。68歳 (蕪村忌)


Sunday, December 24, 2000
 昨日は前の病院のラボの日本人の方々と鍋パーティーをしたのだけれど、午後6時から始まった会がお開きとなったのは、実に日付も変わって午前4時。なんだか、本当に日本に居るような心地好い気分を満喫したひとときだった。

 さて、街には大きなクリスマスプレゼントを抱えた大人たちの姿があちらこちらに。サンタクロースからの贈り物が、今日あたりは世界中に散らばっているに違いない。

 ところで、「いったいいつまでサンタクロースがいると思っていた?」という質問をされることがあるけれど、これにはいつも困ってしまう。なにしろ僕は、サンタクロースが「本当に」居て、各家庭にプレゼントを配り歩いているなんて、だいぶ大きくなるまで(小学校2、3年生ごろまで)ちっとも知らなかったし、知った頃にはもうそんな期待をする歳ではなくなってしまっていたのだから。

 というのも、そもそも我が家には「プレゼント」を贈るという風習が存在せず、クリスマスどころか誕生日に何かを親からもらったこともなければ、お年玉すら僕は親からついにもらうことはなかった。

 僕の両親はどちらも中学校が最終学歴で、おまけに母親の実家は我が家から目と鼻の先。なんとも行動範囲は狭そうだったし、普段も、二人とも朝早くから野良仕事に出かけて、夜はすぐに寝てしまうような生活だったから、僕が小学校の高学年の頃には、とても世の中で起きていることを把握しているようには見えなくて、そもそも世間に「サンタクロース」という存在があるなんてことを、親が知らなかったんじゃないかと、本気で思っていた。しかしその実は、子供にプレゼントを買ってやるような余裕は我が家にはなかったから、「物」に頼らずに我が手で子を育てようとする、親としての意地だったんだろうと思う。

 さてさて、そのサンタクロースは、今や世界中で親しまれている存在だけれど、そのモデルは、4世紀の現在のトルコ付近にあった小国に実在した聖ニコラウスだといわれている。

 商売の失敗で財産を失った貧しい家庭に三姉妹がいて、嫁ぐ際に必要な持参金がなくて悲嘆にくれていたとき、ある夜、娘たちが暖炉のそばに衣類を干して眠ったところ、翌朝、靴下の中に金貨の入った袋が入っていた。それは、気の毒な三姉妹を見かねた聖ニコラウスの施しで、この伝説が、現在のクリスマスのサンタクロースのプレゼントの原型だそうだ。

 しかし、クリスマスにサンタクロースが来るというストーリーは、19世紀前半、神学者の詩により広められたもので、さらに、白い髭と赤と白の服を着たサンタクロースのイメージの誕生は1931年のこと。アメリカ人アーティストのハッドン・サンドブロムがコカ・コーラの広告用に描いたイラストから、世界中に広まった。

【今日の科学情報】
● 医学:アルツハイマー病モデルマウスでの加齢に伴う学習障害とβ‐アミロイド斑
Guiquan Chen, et al. (Nature 21-28 December 2000) 408 Page 975
● 医学:アルツハイマー病モデル動物へのAβペプチド注射で行動障害とアミロイド斑が減少
Christopher Janus, et al. (Nature 21-28 December 2000) 408 Page 979
● 医学:Aβペプチドワクチン投与によるアルツハイマー病動物モデルの記憶障害阻止
Dave Morgan, et al. (Nature 21-28 December 2000) 408 Page 982

【TODAY】
AD1777 クック船長がクリスマス島に到着する
AD1902 作家・評論家で文学博士の高山樗牛が平塚で肺結核のため没。32歳(安積高校第1期生)


Saturday, December 23, 2000
 ジオボードの欄を中心にして応援してきた帆船「あこがれ」が、ついに世界一周という大事業を達成し、母港の大阪湾に帰ってきたそうだ。

 4月の出航から数えて、実に8カ月の長旅。7月15日に僕がボストンでこの船に逢ってからも、すでに5カ月の月日が流れているけれども、その間ずっと海の上を漂っていたわけだから、本当に無事に日本に帰り着いたことがうれしくなってくる。

 『http://www.akogare.or.jp/shipslog/shipslog0.html』からこれまでの航路の詳細を見ることが出来るので、ぜひぜひご覧いただきたい。誰かさんの日記を見ているより、数倍は体の内側からポカポカとあたたかくなってくること請け合い。

【TODAY】
AD 804 遣唐使船の第1船により、留学僧空海が長安に到着する(第2船には最澄が乗っていた)
AD1982 カード式公衆電話が設置される
AD1990 オグリキャップ最後のレースの有馬記念が中山競馬場で行われ、優勝で飾る


Friday, December 22, 2000
 先日ドットTVの話を取り上げたけれど、ドメイン名の新規登録に伴っての企業を相手にしたお金稼ぎの話題がしばらく前まで世間をにぎわせていたのに、最近はとんと聞かなくなったなあと思っていたら、かなり法律の適用法や著作権についての世界的な認識が出来上がってきたことがその原因だということが分かってきた。

 特にインターネット牽引国のアメリカには、特定の集団や個人の商業的利益と明らかに関わりがあると考えられるドメイン名について、その不適当な割当てを防止する目的で制定された「ACCPA」という法律があって、昨年の11月末から施行されている。

 日本にはこの種の法律はまだ整備されていないようだが、森首相のつるの一声で急ピッチで準備が進められていることに対して、国際的に高い評価を受けているのは周知のとおり。

 おまけに、日本でも工業所有権著作権センターが、日本で最初のJPドメインの紛争解決機関として、日本のインターネットドメインを管理しているJPNICから委託を受ける形で、今年の10月からすでに機能していて、明らかな商標権侵害行為を取り締まっているそうだ。

 国際的なインターネットドメイン管理の非営利団体であるICANNの指針では、「ドメイン名を先取りし,商標権を持つ人に対して高額で転売しようとする行為」および「他人が持つ商標と同一または類似のドメイン名を使用したWebサイトを開設し,ユーザーの誤認混同を目論む行為」に対して、これをドメイン名の不正使用と定めるとする取り決めがあるので、工業所有権著作権センターもまたこの指針にそって取り締まりを行っているのだと思う。

 また、様々なトラブルの原因ともなっていることだけれど、ドメイン名を登録する際に商標権が及ばないのは、日本に限った話ではなく、国際的に適用されていない。

 日本の例を挙げれば、登録された商号が独占権を持つのは、原則として本店同士が同一の法務局管内にある場合に限られるので(商号は法務局に登録)、例えば岡山にある会社と同一の社名の会社を青森で設立することが認められる。また、商標(サービスマーク)は全国的に保護されるけれど(商標は特許庁に登録)、商品(サービス)グループ毎かつ国毎に該当する名称の使用が複数にわたり認められているので、登録商標と同じ名称を別の種類の商品名として使用すること(たとえば、日本酒の名前と石鹸の名前が同じというようなこと)や、他の国で使用することは原則的に許されている。

 一般的な商標法の解釈としても、「商品との関連で使われなければ『商標の使用』にはあたらない。」とされていて、他人の商標と同一のドメイン名を登録しても、登録をすること自体は原則として商標法違反にはならないと考えられているそうだ。

 ということで、結局、商標権侵害となるかどうかは当該ドメイン名だけでなく、そのWeb上のコンテンツとの関係で判断されることになり、悪質な場合は「不正競争防止法」という日本にすでに存在する法律によって対処されることになる。つい先日の、富山のトイレ販売会社と大手信販会社の間のドメイン名にちなんだトラブルは、まさにこの「不正競争防止法」によって判決が下されていた。

 まあ、それでも依然としてトラブルが後を絶たないようで、世界知的所有権機関(WIPO)は、「ドメイン名が商標権を侵害している場合、商標権所有者がドメイン登録者に連絡できるよう、ドメイン申請時に連絡先を明確にすること」という勧告を出していて、この「やべっつ・どっと・こむ」も天栄村の実家を連絡先として国際登録されていたりする。

 来年には「.info」「.name」「.biz」などの新たに7つのトップドメイン名が登場することがすでに決定しているので、またまたこれまでに既に登録されている名前との共存競争から、問題も生まれてくるやもしれない。監督組織のICANNは、あらかじめトラブルを防ぐ策として、新しく登録される「.info」などのドメイン名に対して、すでに「.com」などのドメインを持っている企業などに、登録開始日に先行して登録を済ませることが出来るようにするよう、登録業者であるレジストラに勧告しているそうだが。

 というわけで、冬至の夜長につらつらとこんな話題を(決して、今日の実験がうまくいかなかったので、論文を読む代わりに六法全書を引っ張り出してきたらこんなことになってしまった・・・わけでは・・・?)。

【TODAY】
AD 702 女帝・持統太上天皇、没。58歳。我が国初の天皇の火葬となる
AD1808 ベートーヴェンの第6交響曲「田園」と第5交響曲「運命」がウィーンで初演される。惨憺たる失敗に終わる
AD1843 徳川氏の歴史をまとめた「徳川実紀」の編集が終わる。原題は「御実紀」で、1542年から1787年までの245年間、全517冊


Thursday, December 21, 2000
 今日届いたメールに「ちぇー食」なる言葉が。いったいこれはなんだと思っていたら、「ブランチ」のことだそうで、「ちょう(朝)食」と「ちゅう(昼)食」の間なので、「ちぇー食」なんだとか。

 「ブランチ」という新語よりもかなり考えられた(?)単語だと思うけれど、いまいち「軽い」なあ。なんて、批評するほどでもないか。

 さて、僕のスポンサーであるヒューマン・フロンティアという組織は、国をまたいで活動する科学者の支援を行っているフランスに本部のある国際財団。つまり、僕たちのようにポスドクとして働く身には、学位を取ってから5年以内の、母国を離れて他の国で研究活動をする研究者に対して支援をしているし、また国際プロジェクトへの支援は、そのメンバーが2カ国以上にまたがっているプロジェクトに対して研究費のサポートをしている。

 この組織は設立されてまだ日は浅く、来年ようやく12年目のシーズンを迎えるのだけれど、これまでメンバーが一堂に会する機会は設けられていなかった。

 しかしようやく、現在支援を受けているメンバーが、来年6月に初めて一堂に会して、それぞれのプロジェクトを発表しあい、そしてまたさらにそこから新しいプロジェクトを模索しようという試みが、イタリアのトリノで催されることになった。

 会の主旨からいって、国際プロジェクトのリーダーが主に招待されるそうだけれど、1999年にフェローとなったポスドク160人全員が、特別にこの会に招待されることが決定され、その該当メンバーである僕のところにも案内状が寄せられた。「招待」ということなので、もちろん旅費を含む参加費は、財団が負担してくれるとのこと(上限はあるけれど)。

 いやはや、なんとも太っ腹なこと。イタリアどころかヨーロッパには行ったことがないので、これはもう二つ返事でOK・・・と思ったら、最後に注意書きが。

 「2月15日までに発表する研究内容の要旨を提出すること」

 まあ、その会で研究を通しての交流を深めることが目的であるからして、それは当然の要求だ。早いとこ実験をまとめて、イタリアに行けるように、頑張らねば。

 ん、そういえば5月末でビザが切れるけれど、6月にイタリアに行くためには・・・、なんとかなるか。

【TODAY】
AD 219 劉備の忠臣関羽雲長が、呉の孫権の将呂蒙に捕らえられ首を刎ねられる。58歳
AD 934 紀貫之の「土佐日記」の書き始めの日


Wednesday, December 20, 2000
 朝晩とラボへ歩いて通うときに、たいてい僕はヘッドフォンラジオを聞きながらということが多い。最近(といっても3、4カ月前からの話だけれど)、ちょうど歩いている時間帯の午前8時から30分ほどの間に流れるコマーシャルに、『ドット・TV』とさかんに叫ぶものがある。

 来年早々にも新しいインターネットドメインが導入される話(.infoとか.nameなどなど)はすでに知っているけれども、その中には『.tv』というものはないし、かといってこれまであまり聞いたことのないカテゴリーなので、どういうことだろうなあと、ずっと不思議だったのだけれど、今日ついにそれが解決。

 実は『.tv』は南太平洋の島国ツバル国に割り当てられた国別トップレベルドメインで、つまりは日本のドメイン名にある『.jp』に相当するものだった。

 ツバル国は、この『.tv』ドメインの使用権をカリフォルニアのベンチャー企業dotTV社に移行し、その利益を基に国連への加盟を果たしたのだそうだ。

 というわけで、dotTV社はツバルという『国』と契約を結んで『.tv』ドメインを管理するレジストリ(ドメイン管理機関)で、『.com』や『.net』といったドメインと同様に、世界中に売りさばいているということらしい。

 いやはや、なんでも商売になるご時世だけれど、ドメイン名を売って国家予算に割り当てるというそのアイデア(!?)たるや。

【今日の科学情報】
 イギリスの議会で、クローン技術を利用して人間の胚を作成し、その胚を医学研究に使うことを認める法律改正案が、賛成多数で下院で可決された。今後、上院を通過すれば、クローン技術の人間への応用を法律で認める世界初のケースとなる。可決された法案は、クローン人間作りそのものは禁止したが、クローン技術のヒト胚への応用や、受精後14日までのヒト胚を使った医学研究を認めた。これはつまり、万能細胞である「ES細胞」を、再生医療や移植を目的として培養することを認めるもので、不治の病とされる多くの難病の治療に朗報をもたらすことが期待されている。
 法改正を強く支持しているブレア首相は、「バイオテクノロジー分野でのヨーロッパでの指導的な立場を目指す」という自身の公約を見据えての支持だけれど、今こそ生命倫理に関する論議を世界的な規模で十分に行って世界共通のルール作りを始めないと、なんだか人々の救世主となるはずの『科学』が、悪者に見立てられていくような気がして仕方がない。

【TODAY】
AD1821 霧島山が噴火する
AD1899 年賀状郵便の特別扱いが始る


Tuesday, December 19, 2000
 12月15日のこの欄で書いたように、僕は今の今まで、てっきり大家投手は来シーズンはモントリオール・エクスポズでプレーすることが決まったものだと思っていた。というのも、エクスポズのエースDustin Hermanson投手とのトレード話が持ち上がったときに、モントリオールは大家投手をその交換要員として直接指名してきたというニュースが流れてきて、もうすでに決まった話だと僕は思っていたのだ。

 ところが、実はそのトレードは未成立に終わっていた。Hermanson投手は、結局カージナルスに移籍していた。そうなったいきさつは、レッドソックスのDan Duquetteジェネラルマネージャーが「今後チームの核となる選手だから絶対出せない」と、大家投手の移籍を猛烈に拒否したそうで、おまけにエクスポズに限らず、他球団から引く手あまたのオファーが大家投手にあったものをすべて断ったという記事が新聞に載っていた。

 そもそも野茂を獲得したのも、大家が尊敬してやまない大投手を先発ローテーションの中に置くことによって、それに刺激を受けて大家がさらに成長してくれることを願ったものだとのコメントも。

 いずれにしても、僕のとんだ勘違いだったけれども、うれしい勘違いで良かった、良かった。

 日本人のメジャープレーヤーは、エンジェルスの長谷川投手のように一つのチームに腰を落ち着けているケースもあるけれど、野茂投手に限らず転々とチームを渡り歩いているのが現状。そんな中、チームの核としてその将来が期待されるほどの信頼を得ている大家投手の姿は、とても頼もしく目に映る。横浜ベイスターズを解雇されたなんて、過去は過去。「決して挫折しない人生が光り輝くとは限らない。何度へこたれても再びはい上がってくる人生にこそ魅力がある」・・・と言ったのは誰だったかなあ。

 大家投手への期待はフロントだけに限らず、ボストン市民も同じ。来年もまたフェンウエイパークでその雄姿が見れる上に、先発投手5人の枠に野茂投手と共に日本人が2人いるというのは、なんともうれしい。まあ、そうはさせじと今年の大家投手のように虎視眈眈とその座を狙っているたくさんの若手との競争に、まずは勝利せねばならないが。

 今年は5回ほど球場に足を運んだけれども、来年はこりゃもう少し増えそうだ。来月販売開始の4月13日からのヤンキース4連戦のチケットは、すでに予約準備してあるしなあ。

 さてさて、つまずいても転んでも倒れても、体が丈夫に出来ていることを親に感謝しつつ、何度でも起き上がりますか。

【TODAY】
AD1586 秀吉が太政大臣に任じられ、藤原改め豊臣の姓を授けられる
AD1971 円切り上げで1ドル=308円となる


Monday, December 18, 2000
 放射性物質安全管理室から、突然の呼び出し。なんでも、MITで定められている放射線取り扱いのための必要な書類のうち、講義出席とその試験をパスしたという書類が見当たらないため、今行っている放射線を取り扱う実験は許可できない、ということでのものだった。

 しかし、昨年の8月4日の日記にも書いているように、こちらはしっかりと講義もそのあとの試験も受けているので、これはまったくの言いがかりで、そこのところを懸命に釈明。さもなくば、また3時間ほどの講義とそれに続く試験を受けさせられる羽目になる。

 事務の方と議論をしていても平行線をたどるばかりで、なにしろ肝心のその書類が見つからないのだから、こちらとしても何とも不利な状況。そもそも、どうしてこのご時世に電子データベースではなく、書類で管理しているのだろうかと、ちょっとびっくりしたのだけれど、そんなことを言い出してみたところで、事態が好転するとも思えない。

 すると、事務の方がやおら妙案を思いついたように、「誰の講義を受けたか思い出せるか。もしその先生がお前を覚えていたら、パスということにしよう」とのたまう。

 いくらなんでも先生の名前まで覚えているはずもなく、これはほぼ敗色濃厚となったその時・・・奇跡が起きた。その部屋に、確かに昨年の夏に講義を受けたその先生が入ってきたのだ。おもわず、「この人!」と叫んでしまった。

 しかし、先生が分かったところで、この先生が僕を覚えていてくれないといけないのだが、昨日の講義ならいざ知らず、1年4カ月前のたった1回の講義に出席した生徒を覚えているはずが・・・ないかと思いきや、「君の顔なんてまったく記憶にはないが、この『YABE』という妙に変な名前は、なんだか見覚えがあるなあ」なんてことを言い出した。この際、「妙に変な名前(quite strange name)」なんて言いぐさに目くじらは立てない。

 妙に変な名前の威力は絶大で、この先生の記憶をたどっていったら、昨年の11月に、ハーバードで放射性物質を使うために必要な書類のひとつの、MITですでにトレーニングは受けたという証明書を僕がMITに請求したときに、サインをしたのがこの先生だったというわけで、それでまたその時に「妙に変な名前に再び遭遇した」と思ったおかげで、どうやら記憶に残っていたようだ。

 しばらくして、ふと思い出したように、「そういえば、その証明書を作るために書類を秘書に渡して・・・返してもらった記憶がないなあ。」

 一件落着。

 『YABE』という名前で良かったと思った、人生最初の日となった。

【TODAY】
 先日、同い年の川崎投手(ヤクルト・スワローズ)の話題を取り上げたけれど、またまた同い年の注目の人「藤島親方(元横綱・若乃花)」が、なんとも寂しいことに角界を去るというニュース。彼がどのように若手を育てていくのかに興味があったのに、本当に残念だけれど、まあ本人も大いに悩んだ末の結論に違いない。どの世界に進もうとも、「おにいちゃん」ファンとしていつまでも応援するつもりだ。

AD1737 ヴァイオリン製作者アントニオ・ストラディヴァリ(Stradivari,Antonio)没。93歳
AD1898 上野の西郷隆盛像の除幕式が行われる。隆盛未亡人は「主人に似ていない」とつぶやいたといわれる
AD1914 東京中央停車場の開業式が挙行され、東京駅と命名される


Sunday, December 17, 2000
 なんともはや。今日のボストンの最高気温は17℃。いくらニューイングランド地方の天気は変わりやすいからとはいえ、こんなに劇的に変わられていたんじゃ、こちらの体がもたない。

 おまけに、今日は朝から雨で、昼過ぎからはまさにバケツの水をひっくり返したようなどしゃ降り。雷まで鳴り出すさまは、なんだか世紀末を十分に感じさせる異常な気象である。

 まあ、寒くないということは良いことではある。

【今日の科学情報】
 先日、イギリスのネイチャー誌に史上初の植物の全ゲノム配列が掲載されたという話をこの欄に書いたけれど、実は1年前に、同じ植物の「シロイヌナズナ」のゲノムが3分の1ほど解読された段階で、すでにアメリカのサイエンス誌にその配列が掲載されている。ヒトゲノムプロジェクトで、日本も参加している国際協力チームとライバル関係にある民間企業のセレラ社が、ヒトのゲノム配列の掲載をめぐってサイエンス誌と契約を結び、来年早々にも一般公開されそうだという話もこの欄に書いたけれど、どうやらそれをめぐっての駆け引きで、国際協力チームは、今後サイエンス誌にはゲノムプロジェクトのデータはいっさい発表せず、すべてネイチャー誌に掲載しようと主張しているらしい。そしてまずはその手始めに、今回のこの植物のゲノムのデータも、以前発表していたサイエンス誌ではなく、ネイチャー誌に発表したということらしい。なかなか、科学の世界にもしがらみというものがあるようで。
http://news.bmn.com/news/

【TODAY】
AD1903 ライト兄弟が人類初の動力機公開飛行を行う(複葉機)
AD1977 国鉄がリニアモーターカーの初の浮上走行実験に成功する


Friday, December 15, 2000
 レッドソックスから2年契約で総額約7億円にも上るオファーを受けた、ヤクルト・スワローズの川崎憲次郎投手が、正式に入団を断る旨を球団に伝えたそうだ。基本年棒約2200万円でメッツ入りを決めた、阪神の新庄選手とは対照的な決断。

 その理由は、奥さんと2歳になる娘さんを犠牲にしてまで自分の夢を追うことはできなかった、からだそうだけれど、川崎投手をここボストンで見ることが出来なくなってしまったのは、ちょっと残念。家族のために・・・なんて、そんな風に言ってみたい気もほんのりするところが、また複雑なところではある。

 彼は僕と同い年で、大分の津久見高校を卒業してスワローズに入団するやすぐさま活躍。もちろん、僕はそれ以来のファンである。彼の当時の活躍ぶりは、現在の松阪投手の西武での活躍にほぼ匹敵するものだったと確信するほど、彼は僕の一押しピッチャーである。

 ところで、今年大活躍したレッドソックスの大家投手もボストンを去ることになって、なんだかちょっと残念だなあと思っていたところに、新たな朗報。

 お昼の食事から研究室に戻ってきたところ、ラボ一番のレッドソックスフリーク(最近その座がこちらに譲られそうな雰囲気ではある)の大学院生が、「Tomio!」と抱きつかんばかりに走り寄ってきた(ちなみに女性)。ちょっとドキドキしていたら、何のことはないレッドソックスの話で、「トルネードが契約した!」とはじけんばかりの笑顔で叫ぶものだから、初めはなんのことやら分からなかったけれど、どうやら野茂がボストンに来るという速報を耳にしての歓喜だったようだ。

 タイガースからFAとなっていた野茂英雄投手が、レッドソックスと1年契約を結んだというのは、その後インターネットで確認。

 来年はフェンウェイパークで野茂投手の活躍が見られるとは、これはもう今からかなり待ち遠しい。

 さてさて、今日はハーバードのラボのホリデーパーティーが我がボスの上司にあたる大ボスの自宅で催され、なんともうれしいことに、今となっては部外者である身ながら僕も招待を受けたので、それはもう喜んで参加させていただいた。

 ところでこのパーティー、准教授のお宅での開催ということもあってか、盛装(evening attire)での参加が義務ということで、ボストンに来て初めてネクタイを締めることに。こんなのも、たまにはいいもんだ。

【TODAY】
AD1702 未明、赤穂浪士47人が最後に堀部安兵衛宅に勢ぞろい。午前4時、吉良邸に討ち入り。午前6時、吉良上野介は発見され、討ち取られる
AD1887 東北本線が仙台まで開通する


Thursday, December 14, 2000
 放浪人生はまだまだ続くようで、実は今、ボストンで3つ目となる実験台を与えられて仕事をしている。

 共同研究先の生物学科のRosenberg教授の好意で、えっちらおっちらと毎日化学科のラボから通う僕のために、実験台を用意してくれたばかりか、生物学科の一員としても籍を設けていただいたというわけ。

 とはいえ、化学科のラボでの別の仕事もあるものだから、結局今でも毎日少なくとも3往復くらいはこの建物の間を行ったり来たりすることになる。ざっと歩いて5分ほどかかるだろうか。

 まず、化学科のある18号棟の地下室のラボから16号棟への地下道を渡り、56号棟のエレベーターで3階へ。56号棟の廊下を66号棟へのブリッジに向かって通り抜け、ブリッジを渡った後、66号棟の狭い廊下を過ぎて68号棟への吊り廊下を渡る。その行き着いた先が、ようやく生物学科の建物である。

 ところが、目的のラボはこの吊り廊下の正反対の位置の4階にあるものだから、またそこからすたこらと歩かなければならず、まあなんとも日曜日のジョギング代わりになるような運動の毎日である。

 まあ、この道順はといえば、いかにして一度も外の空気に触れることなく目的地にたどり着けるかという、苦心の末に見つけ出したものではある。

 ところで、新しい場所というのは、何か一つのことをするにも、普段の倍の時間がかかるもので、試薬の場所にしろ新しい機械の使い方にしろ、必ずと言っていいほど誰かに聞いて教えてもらわなければならない。それはまあ、余計な時間がかかるということでもあるが、それだけ接する人の輪が広がっていくということでもあって、僕はむしろそんな新しい出会いを楽しむことにしている。

 最近、自己紹介がうまくなったような気がするのは、気のせいかもしれないけれど。

【TODAY】
AD1503 予言者ノストラダムス(Nostradamus)誕生
AD1799 アメリカ初代大統領ワシントン(Washignton,George)没。67歳
AD1903 ライト兄弟の飛行実験が成功する
AD1911 アムンゼンが南極点に到達する


Wednesday, December 13, 2000
 アメリカの大統領が、やっと決まった。

 全米の獲得票で上回りながら、獲得した選挙人数で敗北するという、アメリカ独特の「選挙人制度」によって、ゴア副大統領は大統領の座についに着くことは出来なかった。

 そもそも、この選挙人制度が1787年のアメリカ憲法の草案に取り入れられたのは、「南部出身の白人男性候補に有利に働くように」巧みな戦略によって決められたといういきさつがある。

 当時、直接選挙制を導入しようという意見が大勢を占める中で、南部のバージニア州を中心として、南部には有権者の数が少ないことを指摘し、直接選挙制では圧倒的に北部の有権者の声だけが大統領選を左右することになりかねないと選挙人制度が主張された。

 しかし、これはバージニア州の陰謀にも近いもので、南部の州は選挙人の数を決定するのに必要な人口数に、奴隷の人数も含めていた。この当時、奴隷にはアメリカ国民としての選挙権は与えられていないのに。

 また、この選挙人制度では女性の参政権は当初認められなかった。

 そうして、この選挙制度が南部出身の候補に有利に働いたのは、歴史を見ればあきらかだ。アメリカ憲法施行後、最初の36年のうち32年に亘って南部のバージニア州から大統領が輩出されている。

 そして、今回の大統領選挙。歴史が作り上げた不思議な選挙制度によって、「南部出身の白人男性」のブッシュ氏がその恩恵を被ることになった。まあ、地元のテネシー州で敗れてしまうほどの、ゴア氏の人気のなさにも問題はあるが。

【今日の科学情報】
 かずさDNA研究所が参加している日米欧の研究チームが、植物研究の代表的なモデルとなっているアブラナ科のシロイヌナズナのゲノム(全遺伝情報)の塩基配列の解読を終え、14日発行のネイチャー誌に発表した。植物ゲノムの完全解読は初めてのこと。
Nature (14 December 2000) Vol.408, 796

【TODAY】
AD1491 ブルターニュ公女アンヌが、フランス国王シャルル8世と結婚。フランス国土の統一へ
AD1659 武蔵と下総を結ぶ両国橋が完成し、江戸の市域が江東に広がる


Tuesday, December 12, 2000
 火曜日恒例の「Biology Seminar」の、今世紀最後のトリを飾るのは、24歳にしてMIT化学科の助教授に就任した(本当の話)という伝説の科学者、Gregory Petsko教授のセミナーだった。

 この先生、プリンストン大学を卒業するやイギリスのオックスフォード大学に留学し、そこで化学を専攻すると同時に「古典文学」にも傾倒し、3年でどちらの学位も取得してしまったという奇才。大学での彼の名物授業は、『How to Think(考える方法)』だそうだ。

 さて、構造生物学の最先端をひた走る教授の、『Structural Biology in the Age of Genomics』というタイトルのセミナーが始まると、あきらかに会場は伝説となるにふさわしい彼の魅力の中に引き込まれることになった。

 ほぼ10分おきに大爆笑が起こるそのエンターテインメントぶりも圧巻だけれど、核心に迫る説明が始まるや否や、一字一句も聞き逃すまいとするかのようなシーンと静まり返った会場に響く教授の声は、なんだか劇場で一人芝居を見ているような雰囲気に包まれていた。

 おかげで、1時間半のセミナーが終わったその瞬間は、よくできた映画のエンディングを名残惜しく眺めるような感覚に襲われた。他の観衆もあきらかに同じ感じを抱いていることは、まるでアンコールとでも口に出さんばかりの、割れるような拍手が会場に充満していたことでも見て取れる。

 これは、もちろん彼の話術によるところもあるだろうけれど、なによりも斬新で独創的な研究のアイデアに皆が酔いしれた結果である。

 すばらしいセミナーを聞いて、へこんでいた気持ちもどこへやら。何もかも忘れて、すぐにラボに戻って実験を始めたくなるあたり、この仕事は僕の性にあっているということらしい。

【TODAY】
AD1870 日本初の日刊新聞「横浜毎日新聞」が発行される
AD1942 全国の12の私鉄が国有化される
AD1945 GHQが芝居の仇討ちものや心中ものの上演を禁止する


Monday, December 11, 2000
 今世紀最後の満月となった今日だが、残念ながらボストンは星一つ見えない曇り空。先月の満月が、今世紀の見納めだったはずだが・・・当然のことながら、もう記憶にはない。

 さて、この時期はプロ野球選手の契約更改の話題が、日米を問わずニュースをにぎわせている。特にこちらアメリカの話題といったら、国の大きさ同様、ちと規模の違いさかげんに驚きを通り越して呆れてしまうほど。

 グリフィーJr.が去ってからシアトル・マリナーズの看板選手として活躍していたアレックス・ロドリゲス遊撃手は、レンジャースと新たに契約を結び、25歳にして10年契約で2億5200万ドル(約279億円)というとてつもない金額を手にすることになった。

 いったい、どうやって使うんだろう。

 それから、阪神の新庄はFAでどこに行くのかと思っていたら、なんとニューヨーク・メッツとメジャー契約を結んだとか。イチローのメジャー契約は、こちらでも大変な話題となって、ラボの野球好きの面々で知らない者はいないほどだったけれど、新庄については残念ながらまだあまり知られていないようだ。

 日本のプロ野球に転じて、個人的には、今年大阪近鉄にドラフト指名された 金谷剛選手を応援したい。日本でも、たぶん史上最高齢の新人プロ野球選手と騒がれたかもしれないが、彼は何を隠そうレッドソックスのマイナーでプレーをしていた選手。表舞台に上がりたいという夢をついにかなえて、さてどんなプレーを見せてくれるか。大いに期待したい。

【TODAY】
AD1241 モンゴルの第2代ハーンのオゴタイ・ハーン、深酒が原因で没。56歳。この結果、モンゴル軍の西への大遠征が中止される
AD1957 100円硬貨が発行される


Sunday, December 10, 2000
 最近、なんだか日本ではロボットづいているようで、ホンダの2足歩行ロボットや、ソニーのパラパラを踊るロボットなど、本格的に家庭ロボットの市場導入の気配が感じられる。

 MITといえば、世界的にロボット研究の殿堂として知られている大学だから、そこは日本の企業に負けているわけにはいかない。

 そこで、このほどMITからも2足歩行ロボットが公開された。その名も、恐竜型2足歩行ロボット「Troody」。

 http://www.ai.mit.edu/people/chunks/Videos/

 あれれ?
 こんなんで大丈夫か?

【TODAY】
AD1896 ダイナマイトの発明者でノーベル賞のアルフレッド・ノーベル(Nobel,Alfred Bernhard)没。63歳
AD1898 アメリカ・スペイン講和条約がパリで締結される。キューバが独立し、フィリピン、プエルト・リコ、グアム島はアメリカに割譲される
AD1901 第1回ノーベル賞授与式が行われる。物理学賞は、ドイツのレントゲンに与えられる


Saturday, December 9, 2000
 恒例の"The Seeberger Lab Holiday Party"の今日、ボスのアパートの最上階にあるラウンジで、総勢30人という大パーティーが行われた。

 ラボの総数は18人だけれど、これに単位実験を取っている学部生と交換留学生、さらにラボのメンバーのそれぞれのパートナーを連れ添って、30人にふくれあがったというわけ。

 こうしたパーティーの席で、一番働くのが何を隠そう我らがボスで、今日もイスに座っている時間など記憶にないほどに裏方に撤していた。特に、彼の故郷のドイツの、クリスマス名物のホットワインは、彼にしかこの味は出せないとかで、誰にも手を出させずにキッチンを占領。また、これがなかなかいけるのである。

 さてさて、このパーティーの恒例は「シークレット・サンタ」なるプレゼント交換で、2週間ほど前にくじを引いて該当した人へ用意しておいたプレゼントを、誰からの贈り物であるのかを伏せて本人に手渡すという催し。

 昨年、ボストン・レッドソックスの帽子をいただいた僕は、今年も「BASEBALL : BRAIN TEASERS -- Major League Puzzlers(野球史・頭の痛い人々--メジャーリーグの問題児)」なる本が贈られた。100年に亘るメジャーリーグの歴史の中で、実際にあった審判泣かせのプレーを紹介し、それによってどう野球のルールが変えられてきたのかを紹介している本。

 ふむふむ、つぼが抑えられていますなあ。

 祝・アントラーズ!! 2年ぶり3度目の年間チャンピオン

【TODAY】
AD1867 朝廷が王政復古の大号令を出す。小御所会議で徳川慶喜の辞官・納地を決める
AD1920 アメリカ・カリフォルニア州で排日土地法が成立する
AD1988 宮沢喜一大蔵大臣が、リクルートコスモス未公開株の取り引きをめぐる国会答弁を何度も変えた責任をとって大臣を辞任する
AD1991 ソ連、ロシア共和国、ウクライナ共和国、ベラルーシ共和国のスラブ系3国がスラブ3国共同体の結成とソ連邦の解体を宣言する


Friday, December 8, 2000
 今日のボストンは、朝から一日中雪の舞う日となった。今シーズン初めての積雪も記録し、上品な雪化粧が街を覆い尽くした。

 トップページにもリアルタイムの温度計を表示しているけれど、日中でもマイナス5℃付近の相変わらず寒い一日。

 ただでさえ寒いというのに、ここ最近は4℃の低温室に入り浸っての実験が続いていて、我ながらよくぞ風邪を引かないものだと感心することしきり。まあ、風邪を引いている暇など無いのが幸いしているのだろう。

 明日は、いつもなら午前8時半に始まるミーティングが、ボスの都合で9時半開始。この時期の朝の1時間の遅れは、ボーナスもの。なにしろ1時間も違うと、家を出てからしばらくの体感気温が天と地ほどに感じられるもので・・・。

【TODAY】
BC 428 釈迦が悟りを開く
AD1813 ベートーヴェンの交響曲第7番がウィーン大学講堂で初演される
AD1941 日本時間午前2時、日本軍がマレー半島へ上陸開始。午前3時19分、日本軍がハワイ真珠湾空襲を開始。太平洋戦争の開戦となる
AD1941 イギリス、アメリカが日本に宣戦布告する


Thursday, December 7, 2000
【今日の科学情報】
 Science誌はこのほど、ゲノムプロジェクトの話題を一心に集めているCelera社が、独自解読したヒトゲノムの塩基配列データを、来年1月の前半にもScience誌に発表することで、無料公開することに同意したことを明らかにした(LA Timies)。

 学術目的の研究者は今後、データを自由に使用できるようになるほか、企業の場合でも、商業化しないという契約を結べばデータにアクセスできるそうだ。
 
 但し、自由にダウンロードできるのは100万塩基毎に制約される上、Sciece誌との合意により、GenBankなどの公的なデータベースにはにはCelera社のヒト・ゲノム・データは収載されないことになった。

 科学のこれまでの情報の公開と共有を原則として発展してきた歴史が、バイオ研究の商業化の波の中で、大きな転換点を迎えようとしている。

【TODAY】
AD1787 アメリカ、デラウエア州が合衆国に加盟し、1番目の州となる
AD1944 南東海地方が大地震・津波に襲われる。M7.9、死者998人、行方不明者225人(東海大地震)
AD1954 吉田内閣が総辞職し、長期政権に幕を下ろす
AD1988 アルメニアでマグニチュード7の地震が起こる。死者は推定で5万人


Wednesday, December 6, 2000
 今日のボストンの寒いこと。おそらくこの冬一番の寒さだと確信している。最高気温が0℃、最低気温がマイナス5℃だというけれど、冷たい北風のおかげで体感気温はざっとマイナス10℃は下っているに違いない。

 けれども、おとといの夜に凍り始めていたハズのチャールズ川は、この強い風にあおられてさざ波をたてながら流れていて、その様子を目にしているかぎり表面が氷で覆われることはなさそうだ。

 昨年のようにこの川が凍るということは、この吹きすさぶ風が何日間か吹き止む日がこれから来るのか、はたまたこの強い風にも関わらず、川が凍ってしまうほどますます気温が下がっていくのか。

 いずれにしても、まあ、冬である。

【TODAY】
・フィンランド独立記念日
・AD 694 持統天皇が藤原宮(奈良県橿原市)に遷都
・AD1922 アイルランド自由国が発足


Tuesday, December 5, 2000
 日本では大学には東北大学にしか在籍したことがないので、他の大学も同じ様な境遇なのかどうか定かではないけれど、MITとハーバードで時を過ごしていて感じることは、東北大学に比べて圧倒的に外部からの演者を招いてのセミナーが多いということ。

 例えばここMITでは、毎週月曜日には化学科が主催するセミナーがあり、毎週火曜日には生物学科主催のセミナーが開かれる。そして、もちろん不定期のセミナーもあるから、年間を通してのセミナーの数は、結構な数にのぼると思う。

 この毎週開かれるセミナーは、どちらかというと40歳前後の若手の教授が演者となることが多いのだが、血気盛んな話しぶりに、圧倒されることもしばし。

 話し手が若いということは、聞き手にまわっている大御所からの容赦ない質問が飛ぶこともあるし、学生なども忌憚なく質問を投げかけているようで、講演が終わったあともなかなかに楽しい。

 このような機会は、学生だけでなく我々のような駆け出しの研究者にも大きな刺激になることは疑いのないはずで、日本の大学がこうした機会に多くの予算を配分しないのは、大きな間違いだと切に思う。

 ところで、人の話ばかり聞いているのも飽きるので、いつの日かこんな所に呼ばれて話をするのを夢みて、さてさて、精進しますか。


Monday, December 4, 2000
 いつものようにラボからの帰りに、チャールズ川に架かるハーバード橋の上に差し掛かると、なんだかボストンの街の夜景が今日はとびきり明るく綺麗に見える。

 はて、何が違うのかと、しばし辺りをきょろきょろ。

 いつもは吹きすさんでいる風が、今日はまったくない。おまけに、ビルの窓の明かりがきらきらといつもの倍は輝いているようにも見える。

 風がないので、ビルの窓の明かりがさざ波の立たない川面にくっきりと映し出されて、それでいつもより明るく感じているのかなあ、と暗い川面に目を凝らすと・・・

 チャールズ川の表面がきらきらと輝く・・・なんと、川面に氷が張りつつある!!

 あしたの朝には、川面が一面に氷に覆われている光景が見られるかもしれない。


Sunday, December 3, 2000
 プルーデンシャルセンターの前のボストン名物のクリスマスツリーにも灯がともり、街の雰囲気もいよいよ年の瀬を感じさせるものになってきた。

 20世紀も残すところあと30日。


Friday, December 1, 2000
【今日の科学情報】
「26億年前の陸上生態系を示す地球化学的証拠」
Geochemical evidence for terrestrial ecosystems 2.6 billion years ago
Yumiko Watanabe, Jacques E. J. Martini & Hiroshi Ohmoto
 Nature 408: 30 November 2000, Page 574



最終更新日:2001年 1月 8日